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LINE Outの無料化はそんなにひどいものだったのか?

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LINE Outの無料化が、被災地の電話回線の輻輳を引き起こす可能性がある。

この話題が、炎上しながら一気に広まり、結果的に短い時間で多くの人に伝わって良かったなぁと思っています。

ただ当件に関して、Twitterやはてぶの意見を見ると、「偽善者」「売名行為」と、批判を通り越してもはや中傷…。

では果たして、LINE Outの無料化は、話題になっている程ひどいものだったのでしょうか?

私の結論から先にお伝えすると…。

確かに、電話回線が圧迫する可能性があるものを、ばんばん使っても良いように伝わってしまったのは、やはりまずかったと思います。

しかし、LINE Outの無料化自体は、とても素晴らしい判断だったと思います。

理由は、以下の3つのメリットがあるためです。

無料化のメリット

メリット1. 被災地発信ならば、被災地の電話回線を圧迫しない

LINE Outから固定電話や携帯電話にかける場合は、発信側がインターネット回線で、受信側が電話回線を利用することとなります。

これは、LINE Outで被災地にかけてしまうと、話題の通り被災地の輻輳を引き起こします。

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しかし、逆に被災地から外にかけると、どうでしょう?

この場合は、被災地の電話回線に負荷はかかりません。

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つまり、被災地の電話回線が輻輳状態で、緊急連絡すらままならない状況でも、通話が可能ということです。

とはいえ、今度はインターネットの帯域を専有したり、他に未知のボトルネックがあったりというリスクはありますので、やはり緊急時に限定した方が良いことは確かでしょう。

メリット2. 金銭面の圧迫を防ぐ

これは説明不要だと思います。

メリット3. 決済手続きが不要となった

LINE Outを使ったことのある方はご存知かと思いますが、LINE Outの通話料は前払い制。

LINE Outを使う前に、コールクレジット(前払い金)の購入の必要があり、もし月額プランとするなら、プランの選択や、クレジットカード登録等の決済設定までしないといけません。

この前払いの仕組みを理解し、決済操作を行うというのは、知らない人にはかなりの負担ですし、そもそも仕組みを理解していても、電池残量を節約したい状況でやりたい操作ではありません。

そういった状況だったのが、無料化したことによって、決済操作を完全にスキップして、いきなり通話可能となったのです。

ではLINE Outを利用すると良いパターンは?

まとめると、

  • 被災地から連絡したい
  • 相手が携帯電話か固定電話以外の連絡手段を持たない
  • 緊急連絡したい

の3つの条件が揃った場合になります。

この条件に合わない場合は、一般的な対応を行うのが良いと思います。

また、パケット通信費を考慮すると、Wi-Fiに繋がる、またはパケット定額に入っているも含めて検討する必要があります。

Wi-Fiは、ドコモ、ソフトバンク、AUが、現在00000JAPANというWi-Fiを無料開放していますので、そちらを利用すると良いと思います。

00000JAPAN とは 大規模災害時にWi-Fi無料開放、設定方法は?

00000JAPANポータル  |  無線LANビジネス推進連絡会【WiBiz(ワイビズ)】無線LANビジネス推進連絡会【WiBiz(ワイビズ)】

もしかするとLINE Outが大活躍したかもしれない

今回は、被災直後に目立った輻輳は起きていませんでした。

そのせいもあり、輻輳を引き起こすという理由で、LINE Outが一方的に悪になってしまいました。

しかし、もし既に輻輳が起きてしまっていて、緊急連絡すらできない状況になっていた場合を想像してみてください。

その場合、LINE Outで被災地から発信することで、緊急連絡をできた可能性がありました。

さらに電話回線に負荷をかけないため、輻輳も少なからず軽減したと思われます。

(さらに言えば、被災地が輻輳中の場合、今回問題になった被災地へのLINE Outは、かなり繋がりにくく、実質大きな問題にはならなかったと思われる)

少し都合よく考え過ぎかもしれませんが、可能性は低くないと思います。

そう考えると、被災直後に無料化したLINEのスピード感は、やはり素晴らしかったのではないでしょうか。

なぜ10分間という制限を設けたか

無料で長時間使わせたくない、そういった理由があるのかはわかりませんが、他にも重要な効果があります。

インターネット回線や、LINE Outのサーバーのリソースも有限なのです。

使いすぎれば結局、電話回線と同じように混線する可能性があります。

そういう意味で10分という制限は、長すぎず短すぎず、バランスのとれた時間ではないかと思います。

なぜ被災地だけ無料化しなかったのか

確かに、被災地だけ無料化すれば、外から被災地にかけてしまうリスクも低く、今回のような問題には発展しなかったと思います。

しかし、そうしなかったのはなぜでしょうか。

想像の範囲になってしまいますが、2つ理由が考えられます。

1. 利用者の地区情報を、アプリで取得するのは難しい

利用者の地区情報を取得するには、事前に自己申告で登録してもらうか、GPSを利用して取得するのが一般的です。

しかし、自己申告ではそもそも意味がありません。わざわざ被災地でGPSをONにして…、なんて手順も複雑ですし、GPS自体が安定性の高いものではないため、プログラムしにくいのも事実です。

2. 決済の仕組みを変更するのに時間がかかる

LINEは恐らく、日本の地域毎に決済額を変えるような仕組みは設けていないと思われます。今回のような例外がない限り何もメリットを感じません。

そのため、被災地のみ無料にしようとすると、決して小規模ではない仕様変更となります。

プログラムを組んだことがない人にはイメージがつきにくいかもしれませんが、大規模なシステムの仕様変更は、非常に繊細な作業で時間がかかります。

例えると、ジェンガの終盤。ちょっとした油断で全てが壊れてしまいます。壊さないようにじっくりやるのがコツです。

そんな作業を、1分1秒が惜しいこのタイミングでやりたくはありません。

デメリットがあっても、全体を無料化したのは、こういった理由からではないかと考えられます。

最後に

今更ですが、私はLINEの社員でもないですし、LINEに何の思い入れもありません。

ただ、LINEは今回の無料化にあたり、決して少なくないコストがかかっていますし、システムに普段以上の負荷がかかることから、通常以上の技術者が長時間配置されているはずです。

このように前線で支援している企業や技術者を、簡単に中傷してしまう状況は、一人の技術者として非常に悲しいことだと感じました。

まだまだ、被災地は大変な状況です。

私も、人として、技術者として、微力ながらできることをしていきます。

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